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ローマ歌劇場来日公演、ジャコモ・プッチーニ「マノン・レスコー」初日(神奈川県民ホール)。









指揮:ドナート・レンツェッティ





演出:キアラ・ムーティ

合唱監督:ロベルト・ガッビアーニ







マノン・レスコー:クリスティーネ・オポライス





レスコー:アレッサンドロ・ルオンゴ

騎士デ・グリュー:グレゴリー・クンデ







ジェロンテ・デ・ラヴォワール:マウリツィオ・ムラーロ







エドモンド:アレッサンドロ・リベラトーレ













宿屋の主人:ヴィンチェンツォ・サントーロ









音楽家:ガイア・ペトローネ

舞踊教師:アンドレア・ジョヴァンニーニ

点灯夫:ジャンルーカ・フローリス

軍曹:カルロ・マリンヴェルノ

船長:ロレンツォ・グランテ

ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団















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これは素晴らしい公演!まさか、マノン・レスコーのストーリーにこれだけ感情移入できるとは思わなかった。今回のローマ歌劇場来日公演、個人的には椿姫よりもこちらのマノン・レスコーの方がより素晴らしいと思う。もう一度観たいと思う舞台だ。



この公演の目玉は、今回日本デビューとなる世界的なソプラノ歌手、クリスティーネ・オポライスであろう。同じラトヴィア出身であり、若くして巨匠の扱いを受けている指揮者アンドリス・ネルソンスを夫に持っていたオポライス(3月に離婚)は、プッチーニ歌いとしての評価が高いようで、実際に最近歌っているオペラはほとんどがプッチーニ作品である。6月にロンドンで聴いたワーグナー「ローエングリン」(指揮はネルソンス)、当初は彼女がエルザを歌うはずだったのだが公演のかなり前に降板。



















そのようなわけで今回彼女の歌唱を初めて聴いたのだが、ドラマティックで全ての音域がはっきり聞こえるということに加えて、驚くほどの表現力と演技力を持ち合わせている。まさに歌う女優!ニューオーリンズの砂漠で死ぬという不自然な設定で、まさかあんなに自分がぐっと来てしまうとは思わなかった。少女時代の第1幕と、ジェロンテの愛人となる第2幕、表面的には違うようであるが、底の部分では共通したイメージをしっかりと持って演じていたように思われた。第3幕以降、意外にやさぐれた感はなくて、やはり根底に強い意志が感じられる演技だった。



第4幕の最後で、「自らの生まれつきの美貌が彼から私を引き離そうとした」という台詞があるが、やはりこの役はオポライスのような美人でないと説得力がない。

デ・グリューを演じたのは久々に聴くグレゴリー・クンデ。すでに64歳、マノンと恋仲になるデ・グリューの役としてはかなり無理がある年齢ではある…若干くぐもった声で、若々しい声の伸びはない。しかし第3幕、船長にマノンとの乗船を嘆願するシーンなのでの迫力はなかなかで胸を打たれた。

他の歌手も水準が高く、中でもジェロンテを歌ったヴェテラン、マウリツィオ・ムラーロの堂々たる声は見事。この人、2013年の新国立劇場でも「コジ・ファン・トゥッテ」のアルフォンソ役で味のある演技をしていた。







レンツェッティの指揮が素晴らしく、オーケストラもよく鳴っていて気持ちがいい。第1幕の駆け落ちシーンや、第2幕最後にマノンが警察に捕らえられるシーンにおける緊迫感がすごくて、これらのシーンは音量もぐっとアップして迫力満点。間奏曲における濃厚な表現はまさにイタリアのオケである。







演出はキアラ・ムーティ。名前から想像される通り、巨匠リッカルド・ムーティの娘にして女優・演出家である。私はてっきりリッカルド・ムーティの奥様が演出しているのかと思っていたが、奥様はラヴェンナ音楽祭総裁のクリスティーナ・マッツァヴィラーニ・ムーティであり、キアラはこの二人の娘。夫はイケメンピアニストのダヴィッド・フレイである(かなり年下では?)。



彼女の演出、オーソドックスで華やかであるが、第4幕の「砂漠」を全体のテーマにしていて、第1幕、第2幕、第3幕にもセットの一部に砂漠が用いられている。金銭的に恵まれても満たされないマノンの心の内側を表しているらしい。











終演後のカーテンコールでは、合唱指揮者のガッビアーニと演出のキアラ・ムーティも登場。キアラ・ムーティ、女優ということもあり美しくてびっくり。最後のカーテンコールではオポライスが両手を振って踊りながら退場していった…









神奈川県民ホール、来日オペラ公演の会場としては東京近郊では最も好きな会場なのであるが、今回のマノン・レスコー、1階は結構埋まって見えたものの、3階センター前方はかなり空席があった。もっとも、休憩を挟むごとに移動してくる輩が増えていったようだが…













総合評価:★★★★★